本棚ブログ

本の内容説明や、特定のテーマに沿った本の紹介、気候変動や持続可能性など社会的なテーマをデータに基づき解説します。

このブログについて

読書が好きで書店の陳列棚を眺めながら、自分の興味を探っています。

考えを組み立てる中で、本を読み、そこからエッセンスを探したいと思います。

このブログでは、本の内容を説明するとともに、テーマに沿って何冊かまとめて「本棚」として紹介したいと思います。

これまでは、以下の本や「本棚」を紹介しました。

 また、データをもとに社会的なテーマについても記事を紹介していきたいと思います。

ニュースなどで得られる情報ももちろん大切ですが、その根拠となるデータを探し、データにもとづいて考えることを実践したいと思います。

特に、気候変動や持続可能性に注目して紹介したいと考えています。 

 ご参考になれば幸いです。

SDGsの基本と企業への導入ー沖大幹他「SDGsの基礎」ー

この記事の初めと終わりの章はSDGsに関する一般的な内容で、真ん中の章は企業への導入に関した内容です。

SDGsの基本的な知識

SDGsの基本的な知識として重要な事項を以下でピックアップして説明したいと思います。

SDGs(Sustainable Development Goals)とは?

2015年の国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」、日本語では「持続可能な開発目標」

5つのキーポイント

1. 途上国から先進国まで全世界、全地域共通の目標

2. 産学官民、全セクター、市民一人ひとりが主役

3. 誰一人取り残さない

4. 3領域(経済、社会、環境)、17ゴール、169ターゲット

5. 2030年が目標の期限

引用:筧裕介著|「持続可能な地域のつくり方ーー未来を育む「人と経済の生態系」のデザイン」

SDGsの17の目標

 1. 貧困をなくそう

 2. 飢餓をゼロに

 3. すべての人に健康と福祉を

 4. 質の高い教育をみんなに

 5. ジェンダー平等を実現しよう

 6. 安全な水とトイレを世界中に

 7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに

 8. 働きがいも 経済成長も

 9. 産業と技術革新の基礎を作ろう

 10. 人や国の不平等をなくそう

 11. 住み続けられるまちづくりを

 12. つくる責任 つかう責任

 13. 気候変動に具体的な対策を

 14. 海の豊かさを守ろう

 15. 陸の豊かさも守ろう

 16. 平和と公正をすべての人に

 17. パートナーシップで目標を達成しよう

さらにそれぞれの目標に合計169のターゲットが含まれますが、ここでは割愛します。

SDGsの捉え方ー5つのPー

SDGsを理解する手助けとなるものとして、以下の5つのPが提案されています。 ※()内は対応するSDGsの目標

People(人間):あらゆる形態の貧困と飢餓に終止符を打ち、尊厳と平等を確保する(1, 2, 3, 4, 5, 6)

Prosperity(豊かさ):自然と調和した、豊かで充実した生活を確保する(7, 8, 9, 10, 11)

Planet(地球):将来の盛大のために、地球の天然資源と気候を守る(112, 13, 14, 15)

Peace(平和):平和で公正、かつ包摂的な社会を育てる(16)

Partnership(パートナーシップ):確かなグローバル・パートナーシップを通じ、アジェンダを実施する(17)

国連広報センター|SDGsを広めたい・教えたい方のための「虎の巻」 (https://www.unic.or.jp/files/UNDPI_SDG_0707.pptx)より

プラネタリーバウンダリーとは?

持続可能な開発を考える上で重要な地球の限界を示す概念で、以下の項目が

人間が安全に生活できる範囲内にとどまれば、人間社会は発展・繁栄することができるが、境界を超えると、人間が依存する自然資源に対して、回復不能な変化が引き起こされる

というもの。

1. 生物圏の一体化(生態系と生物多様性の破壊)

2. 気候変動

3. 海洋酸性化

4. 土地利用変化

5. 持続可能でない淡水利用

6. 生物地球化学的循環の妨げ(窒素とリンの生物圏への流入

7. 大気エアロゾルの変化

8. 新規化学物質による汚染

9. 成層圏オゾンの破壊 

MDGsミレニアム開発目標)との違いは?

SDGsの前身として2015年に採択されたミレニアム開発目標MDGs)があります。

1. 極度の貧困と飢餓の撲滅

2. 初等教育の完全普及の達成

3. ジェンダー平等推進と女性の地位向上

4. 乳幼児死亡率の削減

5. 妊産婦の健康の改善

6. HIVエイズマラリア、その他の疾病の蔓延の防止

7. 環境の持続可能性確保

8. 開発のためのグローバルなパートナーシップの推進

外務省|(ODAミレニアム開発目標MDGs(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs.html)より

同じ開発目標で同様に見えますが、MDGsSDGsとの大きな違いがあります。

MDGsは途上国の開発問題が中心で、先進国はそれを援助するという形であったのに対し、

SDGは開発目標だけでなく、経済・社会・環境の3側面に対応し、先進国にも共通の課題としている点です。

SDGsよりもMDGsは見聞きする機会が少なく感じましたが、こういった背景があったからかもしれません。

このMDGsからSDGsへの拡張は、気候変動への危機感への高まりなど、解決に世界的な取り組みが必要な課題への注目度が増していることが一つの要因でないかと思います。

SDGsの日本企業への導入

本書の目的

この本は市民向けというよりは企業や自治体など専門機関向けという印象で、書き方も学術的な記述がされているように感じました。

この本の目的としても、

以下の課題に対し解決策を示すこと

・企業がSDGsに取り組む意義を整理したい。

・環境やCSRに関するセクション以外への理解度を高めたい。

・社内へのSDGsの浸透を進めたい。

・経営への統合、経営計画やビジョンへの連動を進めたい。

とされていますので、企業向けだと思います。

SDGsについての市民・コミュニティ向けであれば、こちらの本がより合っていると思います。

woodyblog.hatenablog.com

SDGs導入のメリット

日本の企業にSDGsの導入を促すために、企業活動にどのようなメリットがあるかを詳しく説明しています。

日本企業へのSDGsのメリットとして、

・新事業の開発

企業価値の向上

ステークホルダーとの関係強化

が挙げられています。

新事業の開発については、SDGsの目標という「課題」に、自社の経営資源という「ツール」を照らし合わせることで、新しい分野を拓くことができます。

企業価値の向上については、そのまま企業のCSR(社会的責任)につながります。

ステークホルダーとの関係強化については、SDGsは人や事象の「連携」を強く意識しています。

経営課題をSDGsに照らし合わせて進めることで、顧客や従業員といった企業に関わる人とのパートナーシップを強めることにつながると考えられます。

優先課題の決定

SDGsを導入するにしても、17の目標は幅が広すぎるように感じます。

日本企業が導入する際にはSDGsの目標よりも、それを受けて日本政府が設定した8つの優先課題が参考になると思います。

日本政府が掲げる8つの優先課題を見ていきます。※()内は対応するSDGsの目標

①あらゆる人々の活躍の推進(1, 4, 5, 8, 10, 12)

②健康・長寿の達成(2, 3)

③成長市場の創出,地域活性化,科学技術イノベーション(2, 8, 9, 11)

④持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備(2, 6, 9, 11)

⑤省・再生可能エネルギー,気候変動対策,循環型社会(7, 12, 13)

生物多様性,森林,海洋等の環境の保全(2, 3, 14, 15)

⑦平和と安全・安心社会の実現(16)

SDGs実施推進の体制と手段(17)

首相官邸SDGsアクションプラン2018(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/pdf/actionplan2018.pdf)より

企業としては、ターゲットを8つの優先課題から定め、それに付随するSDGsの目標を意識した経営方針を進めるといった形になるように思います。

導入ガイド

実際に企業がどのようにSDGsを活用していくかについては、環境省「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド」というものを以下のページで公開しています。

環境省_持続可能な開発目標(SDGs)の推進

 このガイドでは現在企業が置かれている状況やSDGs導入の意義を説明した上で、先進的な事例を挙げるとともに具体的な取り組みの進め方を紹介しているようです。

またSDGsコンパス」というSDGsの企業への導入指針があり、以下のステップで示されます。

ステップ1:SDGsを理解する

ステップ2:優先課題を決定する

ステップ3:目標を設定する

ステップ4:経営へ統合する

ステップ5:報告とコミュニケーションを行う

SGDsとその先

SDGsによる転換

問題が発生したら解決をはかる、という従来の問題追従型(フォワードキャスティング)から、目標を設定してその実現をはかる、という目標追求型(バックキャスティング)への移行が、SDGsが求める大きな転換だとしています。

SDGsに欠けている視点

SDGsは万能というような印象を抱く記述が書籍やWebサイトでは多いように思います。

そんな中、SDGsに欠けている視点をしてきしているのは本書です。

会議に参加し、成立までの流れを見てきた人物が著者に加わっているがゆえの特色だと思います。

例えば、野放図な宇宙開発の抑制や核の平和利用、地雷除去、宗教、LGBT、人口動態に関する目標など、価値観によって意見が異なるような問題は避けられている、と指摘しています。

また、社会的利益の追求に関する目標が多く、精神的な豊かさに関する目標は少ないことも指摘しています。

例えば、知的好奇心の充足、スポーツ、アート、エンターテイメントなど、より良い未来社会に不可欠な要素は含まれていないとしています。

そのあたりがSDGsの先にあるような、今後の国際的な目標になるのでは、と指摘されています。

SDGsに関する書籍は実践する側のものが多いと思いますが、立案に関わった人の目線で書かれている部分もあり、より深い理解につながると思います。

SDGsの基礎

SDGsの基礎

 

 

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表記のない本記事内のすべての引用:沖大幹他著|「SDGsの基礎」

これからの持続可能な社会を考える3冊ー本棚8ー

最近は持続可能性がキーワードとなるような本を紹介してきました。

これからの社会の変化をイメージする上で重要だと思う3冊を紹介します。

持続可能な地域づくりとSGDs

SDGs(持続可能な開発目標)をツールとして、どのように地域課題に取り組み、解決していくか?という内容を紹介しています。

最近さまざまな場面で目にする機会が多くなったSDGsについても、基礎的な内容を説明していますので、SGDsに興味がある方にもおすすめします。

また、紹介されている方法論は地域課題解決だけでなく、プロジェクトの企画・進行など、様々な人が関わりながら進めていく仕事にも役立つツールを提供してくいると思います。

例えば、

対話の場をつくる技術、問いを立てる技術、発想する技術、、、

など、具体的な手順が詳しく解説されています。

そんなことから、手元に置いておきたいと思う、おすすめの一冊です。

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将来の移動のかたち

MaaSという言葉、少しずつ目にする機会はあったものの、何か分からずスルーしてしいました。

しかし、車社会からの脱却や公共交通について調べていたときに、この言葉が出てきて、それをきっかけに詳しく調べてみました。

略語だと分かりづらいですが、Mobility as a Serviceの略、つまりサービスとしての移動手段という意味でしょうか。

今は移動手段といえば、車や自転車であれば所有、バスや鉄道、飛行機であればそれぞれチケットを購入、というようにそれぞれ個別に扱われています。

MaaSはそれらの移動手段を一元化してトータルパッケージのサービスとして提供する、といった概念です。

単なる移動手段としてのみでなく、そこを起点に生活に変化を与え、さらには街づくりにも影響を与えていこうとするものです。

目標としては、持続可能な社会を築くこと、利便性だけでない生活の質を向上させること、が挙げられると思います。

日本ではまだまだ実感できる部分が少ないですが、読んでみると、海外ではそこまで進歩しているのか、と驚きました。

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脱炭素社会への可能性

再生可能エネルギーの導入事例を目にする機会が多くなってきました。

しかしながら、化石燃料エネルギーへ転換は実現するのか、という疑問もあります。

特に現在はコスト面でなく、環境に配慮する面で導入されているように感じていました。

そんな疑問に答えてくれるのがこの本です。

ただ単に再生可能エネルギーの導入促進を主張するのではなく、社会や経済面も考慮して、どうしたら導入が進むのかというロードマップを示しています。

また、それと同時に産業全体を含めた新しいビジネスやサービスの形といった展望も垣間見えてくると思います。

大きく言ってしまえば、これからの社会のかたちを提示している本で、どなたにもおすすめしたい一冊です。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 

 

紹介した本はこちら

持続可能な地域のつくり方――未来を育む「人と経済の生態系」のデザイン

持続可能な地域のつくり方――未来を育む「人と経済の生態系」のデザイン

  • 作者:筧裕介
  • 発売日: 2019/05/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

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年金はどう運用されている?GPIFとは何?

前回紹介した内容を受けて年金基金の運用が気になったので、今回は日本の年金基金であるGPIFについて紹介します。

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GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)とは?

2006年より国民年金および厚生年金の管理・運用を行っている厚生労働省所管の独立行政法人です。

年金基金は世界各国に存在しますが、その中で世界最大の運用資産を持つのがこの日本のGPIFです。

2018年度末時点で約159兆円の運用資産があります。

したがってGPIFは世界最大の機関投資家とよばれています。

「世界の年金基金トップ20」 日本のGPIFが首位、トップ300に日本の16基金 | ZUU online

ちなみに2位はノルウェー政府年金基金ですが、石油収入を運用している基金になります。

実はこのGPIFはYoutubeのチャンネルも持っています。

www.youtube.com

このチャンネル登録者数から見るかぎり、ほぼ全ての国民が関わっており、さらに世界最大の機関投資家であるにも関わらず、知名度は低いように思います。

年金と積立金の関係は?

給付される年金のうち半分は税金で、残りの半分は納付された保険料で支払われます。

現役世代が納付した保険料のうち、年金の支払いに使われなかったものが年金積立金として運用され、将来世代の年金給付に充てられます。

この運用される積立金は平均して今後100年間の年金給付の約1割に充てる計画がされています。

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図の引用:年金積立金管理運用独立行政法人ホームページ(https://www.gpif.go.jp/gpif/pension-finance.html)より

 運用実績は?

運用は投資信託によって行われ、2018年度は34社115ファンドにより運用されました。

2019年度の最終的な数字はまだ出ていませんでしたので、2018年度分を見てみます。

運用資産額:159兆2,154億円

収益額: +2兆3,795億円

収益率:+1.52%

2001年からの通算では、

収益額: +65.8兆円

収益率:+3.03%

2018年度の年金給付は55.6兆円だったので(https://www.mhlw.go.jp/content/000578278.pdf)、2001年からの通算で1年分の年金給付額+αの収益があったことになります。

他年度を見てみると、収益は年ごとにかなりばらつきがあるようです。

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データおよび図の引用:年金積立金管理運用独立行政法人ホームページ(https://www.gpif.go.jp/operation/last-years-results.html)より

 ポートフォリオは?

2018年度末のポートフォリオは以下のようになっています。

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図の引用:年金積立金管理運用独立行政法人ホームページ(https://www.gpif.go.jp/operation/last-years-results.html)より

基本的にポートフォリオは5年単位の中期計画に従って定められるようです。

その中期計画は

GPIFの経営委員会で議決し、厚労省社会保障審議会資金運用部会における諮問・答申を経て厚労大臣が認可

して定められます。

GPIFの運用目標は「賃金上昇率+1.7%」となっています。

年金の保険料収入と年金給付が、賃金水準の変化に応じて変動するため、目標に賃金上昇率が使われています。

ESG投資

投資する企業の判断材料として、キャッシュフローや利益率などの定量的な財務情報に加え、非財務情報であるESG要素(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance))を考慮する投資のこと。

2006年に国連で提唱された、ESGを投資プロセスに組み入れる「責任投資原則」(PRI、Principles for Responsible Investment)にGPIFも署名しています。

長期的には資本市場は環境問題や社会問題の影響から逃れられないので、こうした問題の影響を減らすことができるESG投資は、長期的なリターンを改善する効果が期待できます。

そういった背景からGPIFをはじめとした年金基金など機関投資家からESG投資に注目が集まっています。

前回紹介した「グローバル・グリーン・ニューディール」もこのESG投資と大きく関係しています。
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また、SDGsもESG投資とつながりがあります。

woodyblog.hatenablog.com

 

たしかに年金の給付額は決まっていますが、将来のために納付している自分の資産ですので、やはり運用について知っておくほうが良いと改めて感じました。

少し見づらい場所ではありますが、運用機関や保有している銘柄などは公開されていますので、確認することはできます。

専門家によって適切に運用されているとは思いますが、投資先についてもっと国民が関わってもよいのでは?とも感じました。

個人的にはESG投資などに関心がありますので、今後も定期的に確認してみたいと考えています。

 

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脱炭素社会・グリーン経済への可能性ージェレミー・リフキン「グローバル・グリーン・ニューディール」ー

気候変動への影響を受けて、脱炭素社会への転換が必要だとされています。

しかし、太陽光や風力といった再生可能エネルギーへの転換が実際どこまで現実味があるのか、疑問は多いと思います。

この本はそんな疑問に対する可能性を示してくれる本です。

著者の伝えたいこと

市民や投資家の気候変動への危機感の高まり

アメリカ政府は2016年のパリ協定を離脱し、気候変動対策へは消極的でした。しかし、そのアメリカでも、2018年の意識調査では73%が温暖化が実際に起きていると答えるとともに、ここで紹介する「グリーン・ニューディール」は、どの党の支持層にも60%以上支持されるなど、気候変動に対するアメリカ国民の意識が変化してきていることを示しています。

また、世界的に機関投資家などが化石燃料業界からの投資撤退(ダイベストメント)を進め、再生可能エネルギーへの投資へシフトが加速していることも示しています。このように金融分野でも気候変動に対する姿勢が変化しています。

このように、単なる理想ではなく人々や金融に意識変化があったことで、改革が進む状態になったことを著者は示していると思います。

再生可能エネルギーへの転換の実現可能性

再生可能エネルギーというとコストが伴うというイメージでしたが、そのイメージはすでに過去のものであるということを著者は示しています。2018年の調査では、均等化発電価格※1は太陽光では$36/MW、風力では$29/MWと、ほとんどの石油や石炭、原子力発電所のコストを下回っているとしています。つまり、今後はコスト面でも再生可能エネルギー導入のほうが有利になったということです。

※1発電施設の建設から運転、廃棄といった全てのコストを発電できるエネルギー量で割ったもの

新しい経済社会へのロードマップ

上記で説明したように、人々や金融の意識が変わり、実用的な問題もクリアしつつある。あとは、どう実現し、どの運用していくか、が残る課題です。そこに明確な道筋を示すというのが本書の役割だと思います。

グリーン・ニューディールはスマートインフラ構築

グリーン・ニューディールとは?

2019年にアメリカ議会に提出された

10年以内に、アメリカの全電力を再生可能エネルギーに転換すること、エネルギー供給網・建造物・交通インフラの改善、エネルギー効率の増大、グリーン技術の研究・開発への投資、新しいグリーン経済部門における職業訓練

などを盛り込んだ決議案。これと同様の政策がEUや中国でもスタートしつつある。

目的は?

気候変動に対応するために経済を抜本的に方向修正し、同時に新しいグリーンビジネスと雇用を創出してより公正な富の分配を図ること

スマートインフラとは?

IoT(Internet of Things)インフラのこと。

インフラ構築が再生可能エネルギー社会と強靭な循環型経済に

生産や流通の効率が極限まで高まることで限界費用※2がゼロに近づき、財やサービスの利益率が縮小し、資本主義としてのビジネスモデルとして成り立たなくなってくる。つまり、新しい経済システムが必要となる。

現在のインフラでは総合エネルギー効率※3を上げることができず、生産性の増加につながらない。スマートインフラの構築が雇用機会と従来に替わる新しいビジネスを創出するとともに、再生可能エネルギー社会と強靭な循環型経済への移行を可能にする。

※2限界費用:固定費を別にして、財やサービスを追加的に1ユニットうみだすのにかかる費用

※3総合エネルギー効率:投入されたエネルギーから実際の有用な仕事に転換される部分の割合

化石燃料資産が座礁資産になる可能性

はじめに書いたようにコスト面でも、再生可能エネルギー化石燃料と競合できるレベルになっている。

経済学の経験則で経済学者シュンペンサーが提唱した「想像的破壊」では、挑戦者(この場合再生可能エネルギー)のシェアが市場の3%を占めたとき、既存のプレーヤー(化石燃料)はそれを境にピークから下降に転じ、やがてゼロに近づくというもの。これはガス灯と電気照明の転換時にも当てはまっていた。

エネルギー需要の伸び率を1〜1.5%、太陽光・風力による供給の伸び率が15〜20%の範囲内だと予想され、そこから化石燃料需要のピークは2020〜2028年と予想される。

化石燃料の需要が低下することで、成長を見込んで投資していた資産が座礁資産となる。EUでは再生可能エネルギーの市場規模がまで14%のときに化石燃料をベースにした電力会社が崩壊し、5年間で1480億ドル以上の損失が生じた。これと同様の損失が世界で起きる可能性があることが指摘されている。  

年金基金をスマートインフラへ投資

座礁資産を抱える化石燃料産業に投資し続けては、労働者の退職年金を失いかねないとして、ニューヨーク、ロンドン、ワシントンDC、コペンハーゲン、パリ、サンスファンシスコ、シドニーストックホルム、ベルリンなど世界150の都市・地域で年金基金化石燃料産業からの投資撤退が進み、再生可能エネルギーなどスマートインフラへの再投資されている。このように年金基金からの投資を行うことで、スマートインフラに必要な資金を調達することができる。

年金基金がインフラ投資に参入することで、年金基金受託者は加入者や労働者の声を受けて、民間企業よりも社会的責任投資(ESG投資)を選択する傾向が強い。インフラを民間企業に渡すと事業として利益面が優先されてしまうが、年金加入者や労働者といった市民が管理できるシステムとすることでサービス面が重視される。

このようなシステムを構築することで、従来中央集権型だったインフラがそれぞれの地域における分散型のものとなる。これは風力や太陽光といったどこでも発電できる再生可能エネルギースマートグリッドととても相性がよく、生産性を高めるとともに、レリジエンス(強靭性)も備えたインフラにすることができる。

 

ロードマップとしては

  1. 再生可能エネルギーはコスト面でも化石燃料に勝るように
  2. 化石燃料への投資は座礁資産に
  3. 化石燃料業界へ投資されていた年金基金をスマートインフラへ投資
  4. 新しい雇用やビジネス創出
  5. 気候変動に適応し、持続できるような経済・社会システムを構築

というような流れになると思います。

本書では直接触れていませんが、SDGs(持続可能な開発目標)も同時に満たすようなロードマップではないかと思います。

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各国政府高官や経済界トップにアドバイスを行っているような人物が、今後の社会のかたちをどのように描いているのかを知ることのできる、とても面白い本です。

 

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本記事内のすべての引用:ジェレミー・リフキン著|「グローバル・グリーン・ニューディール

本を読むことは想像力を高めること

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本を読むことで知識や論理、発想などを得ています。

でも、一番のメリットは想像力が高まることだと思います。

本から得た新しい知見が頭の中で空白だったところに収まる。

そうすると全体像がはっきりして、その先がみえてくる。

これが想像力が高まるということだと思います。

みえないこと、分からないことに対しては不安を抱きがちです。

でも、確かかどうか分からなくても、想像できれば不安を減らせます。

そして、不安が減ることで踏み出せる一歩もあるはずです。

読書は思考と行動を前に進めると思います。

政府トップに関する日本と各国との比較

ここ最近は新型コロナウイルスへの対応で首相や知事など、複数の行政トップを同時に目にする機会が多く、比較してしまう場面もあったように思います。

意見を形成する議員と、最終的な判断をするトップでは必要とされる能力が違うように感じます。

特にこのような状況ではより判断力が問われると思います。

そんな状況の中で挙がった疑問は、政府トップのうち地方自治体の首長を経験者はどれだけいるのか?というものでした。

国のトップとなる人物は地方自治体などで首長としてトップとして采配を振る経験してきたのか?諸外国のデータと合わせて調べてみました。

woodyblog.hatenablog.com

調べていく中で、各国政府トップに関するシステムにも興味を持ち、調べて比較をしてみました。

woodyblog.hatenablog.com

その中で、日本と他国と大きく違う点はトップ経験者の多さであることが分かりました。

その違いを政府トップ交代の理由を比較することで考察しました。

woodyblog.hatenablog.com

もちろん以上の記事での論理はデータに基づく推測ですが、データを調べることで自国のことでもあまり知らないことに気づきました。

ご参考になれば幸いです。

各国政府トップの交代の理由は?

これまでの政府トップに関する記事で、他国と比べて日本は政府トップの経験者数が多く、言い換えれば頻繁にトップが交代していることが分かりました。

woodyblog.hatenablog.com

回数制限はあるものの、任期はどの国も4, 5年と大きな差はありませんでした。

つまり交代が頻繁に起こっているということです。

そこで各国の政府トップについて、交代の理由を調べてみました。

日本 首相(内閣総理大臣

総選挙:5人(15%)幣原喜重郎吉田茂宮沢喜一麻生太郎野田佳彦

任期・憲法改正:3人(9%)鈴木善幸中曽根康弘小泉純一郎

病気・死去:5人(15%)石橋湛山池田勇人小渕恵三安倍晋三大平正芳

事件・問題・罷免:4人(12%)芦田均田中角栄竹下登鳩山由紀夫

辞任・政党再編:16人(48%)片山哲吉田茂鳩山一郎岸信介佐藤栄作三木武夫福田赳夫宇野宗佑海部俊樹細川護煕羽田孜村山富市橋本龍太郎森喜朗福田康夫菅直人

アメリカ 大統領

任期・憲法改正:10人

病気・死去:ジョン・F・ケネディ

事件・問題・罷免:リチャード・ニクソン

辞任:0人

イギリス 首相

総選挙:7人(47%)、クレメント・アトリー、アレック・ダグラス=ヒューム、ハロルド・ウィルソン、エドワード・ヒース、ジェームズ・キャラハン、ジョン・メージャーゴードン・ブラウン

病気・死去:2人(13%)ウィンストン・チャーチル、アンソニー・イーデン

事件・問題・罷免:2人(13%)ハロルド・マクミラントニー・ブレア

辞任:4人(27%)、ハロルド・ウィルソン、マーガレット・サッチャーデーヴィッド・キャメロンテリーザ・メイ

ドイツ(西ドイツ→再統一ドイツ) 首相

 総選挙:3人(43%)ヘルムート・コール、ゲアハルト・シュレーダーヘルムート・シュミット

任期・憲法改正:0人

病気・死去:1人(14%)、コンラート・アデナウアー

事件・問題・罷免:0人

辞任:3人(43%)、ルートヴィヒ・エアハルト、クルト・ゲオルク・キージンガー、ヴィリー・ブラント

フランス 主席→大統領

総選挙:フェリックス・グーアン

任期・憲法改正:8人

病気・死去:レオン・ブルム、ジョルジュ・ポンピドゥー

事件・問題・罷免:0人

辞任:シャルル・ド・ゴール(2回)

中国 主席

任期・憲法改正:7人

病気・死去:毛沢東

事件・問題・罷免:0人

辞任:0人

韓国 大統領

任期・憲法改正:6人

病気・死去:朴正煕

事件・問題・罷免:朴槿恵

辞任:李承晩、尹潽善、崔圭夏

 

どこの国でも、病気や死去によって10%前後のトップ交代が起きているようです。

アメリカ、フランス、韓国の大統領や中国の主席では任期による交代が多いようです。

ただし、韓国は任期後に不正追求などにより有罪判決を受けているそうです。

大統領 (大韓民国) - Wikipedia

また、日本、イギリス、ドイツといった首相制の国では、辞任も多いようにみえます。

比較が難しいため首相制の国のみでみていくと、一番大きな違いは日本はイギリス、ドイツと比較して、総選挙による交代の割合が少ないようです。

総選挙数に対する辞任数の割合をみてみると、イギリスは0.6倍、ドイツは1倍、日本は3.2倍と、日本は総選挙よりも辞任などでの交代がかなり多いことがわかります。辞任の理由としては引責や政局などが挙げられます。

つまり国民による選挙よりも、引責や政局など与党内での人事によるトップ交代のほうが多いというのが日本の特徴というようにみえます。

※この記事の情報はWikipedia(https://ja.wikipedia.org/)を参考に作成しました。情報に漏れがあるかもしれないことをご理解下さい。

 

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